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緑色の微細藻類の培養液が入った透明な容器と、ワムシ培養槽が並ぶ明るい海産魚ふ化場の実験室

AQUACULTURE HATCHERY LAB

ワムシから配合飼料へ。
仔魚の最初の餌を整理する。

微細藻類、ワムシ、アルテミア、配合飼料の流れと、国内外の供給プレイヤーを、公式情報の範囲で整理します。

仔魚の最初の餌:初期飼料の全体の流れ

最終更新日:

本ページの一般的な説明は、公的機関の報告書と各社の公式情報の範囲で整理したものです。給餌の日数、餌の種類、栄養強化の方法は魚種や施設により異なるため、個別の判断は各施設の技術者の指示に従ってください。

ふ化した仔魚は、口が小さく、消化器官も未発達です。そのため、配合飼料をそのまま食べさせるのではなく、生きた小さな動物プランクトンを最初の餌とする方法が、海産魚の種苗生産で長く使われてきました。代表的なのが、シオミズツボワムシ(以下、ワムシ)と、アルテミアのふ化幼生です。

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多くの海産魚では、おおまかに次の順で餌を切り替えていきます。まず小型のワムシを与え、成長に合わせて大きなワムシやアルテミアに移り、最後に配合飼料に切り替えます。水槽には、ワムシの餌になる微細藻類を一緒に入れて、水質を整えながら餌の栄養価も保つ方法(グリーンウォーター法)が採られることがあります。切り替えのタイミングや日数は魚種で異なります。

この初期飼料の工程は、種苗生産の生残率を大きく左右するとされ、ふ化場の技術者の経験が重みを持つ領域です。後述のとおり、ワムシの培養が不調になる「培養クラッシュ」や、栄養強化の不足は、仔魚の成長不良や大量死につながる課題として知られています。コスト構造のページでも、生残率が原価に与える影響を扱います。

ワムシ培養:小型の動物プランクトンを大量に育てる

ワムシは、海産魚の仔魚に最初に与える餌として、世界的に広く使われています。ふ化場では、ワムシを専用の水槽で大量に培養し、仔魚の水槽へ毎日与えます。培養に使う餌として、淡水産のクロレラが広く利用されてきました。沖縄県の水産研究機関の報告書には、ワムシの一次培養や二次培養にクロレラ工業製の淡水生クロレラを用いた記載があり、現場での使い分けがうかがえます。

ワムシは、そのままでは仔魚に必要な脂肪酸が不足するため、与える前に栄養強化を行う工程が一般的です。DHAやEPAなどの高度不飽和脂肪酸を含む強化剤にワムシを一定時間浸し、栄養価を高めてから仔魚に与えます。近年は、ワムシの栄養強化を別に行わなくてもよい設計の飼料や、ワムシ培養を簡素にする製品も各社から提案されています。

培養の失敗は、ふ化場の運営にとって大きなリスクです。ワムシの密度が急に下がる培養クラッシュは、水温、餌の質、水の汚れ、微生物の増殖などの要因で起こるとされます。このため、培養槽の数を分散し、いつでも立て直せるようにしておく運用や、休眠卵(耐久卵)から培養を再開できる体制が重視されます。科学技術振興機構(JST)の資料には、クロレラ工業がワムシの休眠卵の量産と製品化に取り組んでいたことがうかがえる記載があります。

アルテミアと動物プランクトン:ワムシの次の餌

アルテミア(ブラインシュリンプ)は、乾燥した耐久卵を海水に入れると短時間でふ化し、ふ化直後の幼生を仔魚の餌にできる点が便利です。ワムシより大きいため、成長した仔魚が食べる次の餌として使われます。ふ化したばかりの幼生は栄養が限られるため、ワムシと同様に栄養強化を行ってから与える運用が一般的です。

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アルテミアの卵は、産地や品質のばらつきが調達上の課題になることがあります。このため、アルテミアの代替となる製品や、動物プランクトンのコペポーダの利用が研究・提案されています。Reed Mariculture の公式サイトには、生きたコペポーダやアルテミアの代替を目的とした製品である ARPods 500 が、新製品として紹介されています。ただし、こうした代替品の効果は魚種や施設により異なるため、導入前に各社の技術資料や試験結果を確認する必要があります。

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微細藻類:ワムシの餌と水の調整

ナンノクロロプシス、クロレラ、テトラセルミス、イソクリシスなどの微細藻類は、ワムシの餌になるだけでなく、仔魚の水槽に加えて水質を安定させる目的でも使われます。沖縄県の報告書には、ナンノクロロプシスを濃縮装置で濃縮して保存し、ワムシの餌や魚類の種苗生産水槽への添加、藻類培養の元種に使い分けた記載があります。同じ報告群では、濃縮したナンノクロロプシスのうちワムシ培養での使用が約63%を占めたとされています。

藻類を自家培養するのは手間とコストがかかるため、濃縮した藻類や冷凍藻類を購入する選択肢があります。Reed Mariculture の Instant Algae は、冷凍した藻類の濃縮製品で、ナンノクロロプシス、テトラセルミス、イソクリシス、パブロバ、タラシオシラなどを提供すると、公式サイトに記載されています。冷凍の状態で約2年の保存が可能な製品があることも示されています。自家培養か購入かは、施設の規模、品質管理、人手の確保によって異なる判断になります。

配合飼料への切替:離乳の難しさ

仔魚が成長すると、生き餌から配合飼料へ切り替えます。この段階は離乳と呼ばれることもあり、切り替えが早すぎると成長不良や共食いが増え、遅すぎると生き餌の培養コストが膨らみます。そのため、生き餌と配合飼料を重ねて与える期間を設けるなど、段階的な移行が一般的です。

仔魚用の配合飼料は、粒径が非常に小さく、水中で崩れにくく、消化吸収が良いことが求められます。飼料メーカーは、仔魚期の栄養設計や粒径の細かな調整、水質への影響の小ささを開発の焦点にしています。たとえば BioMar は、ふ化場向けの飼料ブランドとして LARVIVA を展開し、デンマークの研究施設を拡張したと報じられています。Skretting はふ化から出荷までの飼料を提供する企業として、エビのふ化場向けの飼料を紹介しています。国内では、後述の比較表に示す飼料メーカーが養魚用飼料を提供しています。

魚種と施設で変わる設計:給餌プログラムの考え方

初期飼料の設計は、魚種ごとの開口サイズ、成長速度、水温、変態の有無などで変わります。たとえば、口が小さい魚種ではより小型のワムシを使い、成長が速い魚種ではアルテミアへの切替を早める、といった調整が行われます。ヒラメのように成長の途中で体の形が大きく変わる魚種では、この時期の栄養の過不足が体色の異常などに関わるとされており、栄養強化の内容に細かな配慮が求められます。

施設側の条件も設計に影響します。屋外の大型水槽で自然光を使う施設と、屋内で水温や光を管理する施設では、藻類の増え方も、ワムシの増殖の安定性も異なります。水を循環させて使う方式では、水質の変化に合わせて給餌量や藻類の添加量を調整する必要があります。そのため、一つの給餌プログラムをそのまま他の施設に移しても、同じ生残率になるとは限りません。

この違いが、初期飼料に関する技術情報を公開している事業者や公的機関の資料を読む際の注意点になります。資料に書かれた日数や給餌量は、その試験や施設の条件での結果であり、一般的な基準ではない点に留意してください。導入にあたっては、自らの魚種と設備での小規模な試験を経ることが現実的です。

初期飼料・藻類の供給プレイヤー:小比較表

プレイヤー提供元・形態主な提供物対象公表されている情報備考(同社の説明を含む)
クロレラ工業株式会社国内の企業。クロレラ専門メーカーとして創業淡水生クロレラなど(水産向けの具体的な製品名は公式サイト参照)ワムシ培養など水産分野事業分野は人、農業、水産業、食品の4つ。九州筑後工場を研究開発の拠点として掲載沖縄県の報告書に、同社の淡水生クロレラをワムシ培養に用いた記載あり
株式会社ヒガシマル国内の企業(1979年に鹿児島県で設立)養魚用配合飼料等養魚用飼料全般。稚魚用の個別製品は公式サイト参照有価証券報告書に、養魚用配合飼料等と食品の製造・販売と記載子会社のマリンテックが魚介類種苗と養魚用栄養強化剤等を製造販売と記載
日清丸紅飼料株式会社国内の企業。丸紅が60%を出資すると丸紅が発表水産飼料養魚用飼料。稚魚用の個別製品は公式サイト参照公式サイトに水産飼料事業の製品紹介ページあり中国で水産飼料の製造販売を開始すると2020年に発表
林兼産業株式会社国内の企業養魚用飼料と畜産用飼料養魚用飼料。稚魚用の個別製品は公式サイト参照公式サイトに、多彩な養魚用飼料を提供すると記載飼料事業のほか食品事業を展開
INVE Aquaculture民間企業(本社所在地は公式サイト参照)栄養、健康、環境に関する製品親魚からふ化場、育成まで。魚とエビ公式サイトに、2026年6月に魚向けプロバイオティクスの Sanolife PRO-TAB を発表と記載公式サイトの製品検索で個別製品を確認
Reed Mariculture米国の民間企業(1995年創業と記載)冷凍藻類 Instant Algae、ARPods 500、RotiGrow OneStep などワムシ培養とふ化場。魚と貝など公式サイトに、500以上のふ化場・大学・観賞魚事業者が利用と記載(同社の説明)内陸の閉鎖循環式施設で生産し、病原体を持ち込まない設計と同社が説明
BioMar民間企業(デンマーク)ふ化場向け飼料 LARVIVA シリーズ仔魚期から稚魚期デンマーク・ヒアツハルスの研究施設を拡張と報道研究員を増員し、仔魚の飼育と生き餌の生産の試験が可能と報道

2026年10月時点、各社公式サイト・公開資料に基づく。最新情報は各社サイトで確認してください。

供給プレイヤーの補足:読み方と注意

上の小比較表は、初期飼料の分野で事実確認できたプレイヤーを並べたものです。国内の飼料メーカーは、養魚用の配合飼料全般を提供しており、仔魚用の個別の製品や粒径の仕様は、公式サイトの製品一覧や営業窓口で確認する必要があります。そのため表では「稚魚用の個別製品は公式サイト参照」としています。

表に「同社の説明」とあるのは、製品の性能や保存期間などの数値を、各社が自ら公表している内容として記載しているものです。これらは第三者による検証結果ではないため、導入を検討する場合は、公開された試験データや現場での使用事例を確認することが望ましいといえます。

微細藻類の提供者、動物プランクトンの代替品、配合飼料メーカーは、仔魚の水槽の中でそれぞれ異なる役割を担います。ふ化場は、これらを組み合わせて、自らの魚種と設備に合った給餌の設計を行います。海外の事業者は、サケ、エビ、観賞魚の分野での実績が目立ちますが、国内の海産魚への適用は個別に検討する必要があります。育種とゲノム技術が仔魚の耐病性や成長に与える影響は、育種とゲノム技術のページで扱います。

一次情報の確認先

関連サイトとして、飼料原料の多様化を扱う昆虫ブリーディングや、代替プロテインもあわせてご覧ください。

本サイトは公開情報を整理した業界レポートであり、特定の事業者・技術・種苗の推奨や投資助言ではありません。市場規模・生産量などの数値は出典の時点のものです。事業判断は各社公式情報・行政資料をご確認ください。